10年前の写真とTopaz Labs Gigapixel AIで向き合う
コロナウイルス禍の今、外に出るのを自粛して、過去の写真を現像し直すことで過ごしている人も多いのではないだろうか。私は実に10年ほど前の写真を現像し直している。当時の私のカメラと言えば、SIGMA DP1とSIGMA DP2だ。
コロナウイルス禍の今、外に出るのを自粛して、過去の写真を現像し直すことで過ごしている人も多いのではないだろうか。私は実に10年ほど前の写真を現像し直している。当時の私のカメラと言えば、SIGMA DP1とSIGMA DP2だ。
Foveonセンサーのコンデジであり、有効画素数は3層で約14MP(1400万画素)、3層なので実際に取り出される画像は約4.6MP(460万画素)という、当時でも数字の上では低画素数のカメラである。 しかし、その解像力は素晴らしく・・・それを振り返るのは置いておこう。
10年を経て、4.6MPの写真は今やスマホと比べても低画素である。 もっと画素数が欲しい。 そこで利用したのが、Topaz Labs Gigapixel AIである。以下はオフィシャルの紹介ビデオだ。
オフィシャルサイト、オフィシャルビデオ、オフィシャルと言われると胡散臭く感じるのが普通だろう。そこで、以下の3パターンを比べてみた。
- ただのアップスケール(Bicubic方式)
- Adobe Photoshopのテクノロジープレビューである『ディテールを保持 2.0 アップスケール』(v21.1.2)
- Topaz Labs Gigapixel AI (v4.7.1)
東京汐留のビル
まずはシャープな直線で構成されたビルの写真を縦横3倍にアップスケールしてみた。
(理由を忘れたが)元の画像の時点で少しクロップしており、1,612 * 2,470 = 3,981,640px(3.9MP)
、生成後の画像は 4,836 * 7,410 = 35,834,760px(35.8MP)
である。
Photoshopでは現在のバージョン(v21.1.2)では、標準でディテールを保持 2.0が有効になっているはず。画像解像度を変更する際に、再サンプル方式として選択すれば良い。「ノイズを軽減」のパラメータは12%を指定している。
イメージ → 画像解像度から『ディテールを保持 2.0』を利用できる
Photoshopによる変換は数秒といったところだ。後述するが、Gigapixel AIとは処理速度が大きく異なる。
Gigapixel AIでは、読み込んだあとにプレビューを見ながらパラメータを調整する。「Suppress Noise」でノイズ低減を、「Remove Blur」で点像復元のレベル、シャープネスを変えられる。Autoモードもあるが、今回は直線と雲の様子を見ながら、マニュアルで50, 50を指定した。
パラメータを調整する。現在のバージョンでは、AutoよりManualが良い。
私の環境(Intel Core i7 4720HQ 2.60GHz / GeForce GTX 970M)ではアップスケールは3分ほどで完了した。Photoshopとの比較でわかるように、処理は非常に時間がかかる。もっと大きな画像ではもっと時間がかかることに注意だ。
それでは、それぞれで生成された縦横3倍スケールアップ画像を比較してみよう。
どうだろう。Photoshopのディテールを保持2.0も健闘はしているが、カラーノイズが出ていて拡大したという印象が強い。一方でGigapixel AIはまるで高画素カメラで撮った写真のような自然さに思える。 このパターンではGigapixel AIの圧勝ではないだろうか。
以下にはオリジナル画像と、アップスケールした画像2種類を掲載する。アップスケール後は10MB超えのファイルなのでご注意を。「新しいタブで開く」か「名前を付けて保存」を選ぶと、フルサイズで確認できると思う。
- Original - Shiodome, Tokyo (3.9MP)
- Photoshop Preserve Details 2.0 - Shiodome, Tokyo (35.8MP)
- Gigapixel AI - Shiodome, Tokyo (35.8MP)
台湾・台北101からの夜景
旅行先の台北101の展望台で雨の日に撮った夜景。旅の思い出の写真で、展望台のガラス面の滲みが見られたりと、クォリティが低いのはご愛嬌としてご容赦を。こちらはSIGMA DP2のフルサイズだ。
Original - View from Taipei 101 - SIGMA DP2 (4.6MP)
夜景ということで、Photoshopでは「ノイズを軽減」のパラメータは43%を指定、Gigapixel AIではAutoを指定している。
元の画像が点光源の集まりであること、ガラス面の滲みが大きいことからか、スケールアップによる解像感の向上はあまり感じられないかもしれない。加えて、本来存在しないはずの線が描画されてしまっていたりと、Deep Learningの誤変換も現れている。 しかし、こちらにおいてもGigapixel AIが最も綺麗なアップスケールに見える。
以下に画像を掲載する。こちらも10MB超えのイメージなので表示の際にはご注意を。
- Original - View from Taipei 101 (4.6MP)
- Photoshop Preserved Details 2.0 - View from Taipei (41.8MP)
- Gigapixel - View from Taipei 101 (41.8MP)
タイ・プーケットでの緑溢れる風景
最後はタイ・プーケットの旅行で撮影した緑が溢れるショットから。木々の葉と幹、花、人物、籠、水面など、質感の異なるものが散在している。明るさが十分であり、Foveonの本領が発揮されている一枚だ。
今回はPhotoshopの「ノイズを低減」は2%を指定、Gigapixel AIにおいてはフルオート + Face Refinement有効でアップスケールした。
こちらの仕上がりは、少しシャープなのがPhotoshop、ノイズが少ないのがGigapixel AIといったところだろうか。枝や花に関してもGigapixel AIの方が自然である。言うまでもないが、いずれもシンプルなアップスケールとは比較にならない。
以下に画像を掲載する。こちらも10MB超えのイメージなので表示の際にはご注意を。
- Original - Phuket, Thailand (4.6MP)
- Photoshop Preserved Details 2.0 - Phuket, Thailand (41.8MP)
- Gigapixel - Phuket, Thailand (41.8MP)
まとめ
この記事では、約10年前のカメラで撮った約4MPの写真を約40MPという現代の最新カメラでも殆ど達していない高解像度に変換してみた。 SIGMA DP1/DP2は現代のスマホにも及ばない解像度であるが、ドットバイドットではとても緻密であり、ダイナミックレンジは現代のスマホにも勝っている。それにTopaz Labs Gigapixel AIを組み合わせることで、現代の写真と並べても遜色ないレベルとなったと私には感じられた。 写真はその瞬間にしか撮れない。現代のカメラを持って10年前の風景に立ち会うことはできないが、10年前の風景を現代の品質に変換できることはとても価値があるように思う。
Gigapixel AIにも得手不得手はある。私が試した限り、例えば、人物写真などではシャープネスがキツいし、元の写真の画質が悪いとノイズやモアレも一緒にスケールアップされてしまう。2つ目の夜景写真は苦手なケースに思う。 それでも、ハマったときの写真のクォリティは自信を持ってお勧めできるレベルである。 Gigapixel AIは$99.99と、お買い得とは言えない価格だ。もしスケールアップしたい写真があるなら、まずは30日の無料体験期間で試してみるといいだろう。
おまけ
Topaz Labs Gigapixel AIで高解像度化したものをさらにSkylum Luminar4で仕上げて出来上がった完成品を以下にアップしておく。10年の写真現像技術の進化と、私の趣向の変化を味わえる仕上がりとなった。